<子供絵画教室時代のお話>
以前私が主宰していた教室で子供の絵のクラスがはじまった当初の話です。
イヤイヤ絵を描いていた?子供たち。自信もなく、できあがると絵を描いた本人もガッカリしているし、私もガッカリ。
鉛筆で下書きを描いて、そのあと絵の具で塗って…というかんじだったので、2時間のクラス2回くらいでやっと1枚完成。子供たちは、あんまりすすんで描かないんです。
水彩絵の具は半透明で、色をぬると下書きも見えなくなっちゃうし、油絵のようにでもないから、完全に上から白くぬって描きなおすこともできないし…。
いったん絵の具でグジャグジャになったものを直していくというのは、不可能に近いんですよね。
それで子供は自分でわかっちゃうんです、汚いなぁって。ただグジャグジャ色をぬっているだけで、楽しくない。(だから、枚数も増えない。)
(せっかく下書きはまぁまぁオモシロかったのになぁ…)
(あぁーあー、またやっちゃった…)っていう。
そういうことが続いて、でも、そんな状況からなんとか脱出しなくてはいけないと考えていました。すると、
(なぜ、色をぬらせなくっちゃいけないんだろう?)
と思ったんです。
その時までずっと『子供の絵(水彩画)っていうのは、鉛筆でかいて、色をぬって完結するものだと』思っていたんですが、その時決めました。
「色をぬるのをやめさせよう。」と。
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★シンプルにしたら、見えてきたモノ★
「色をぬらなくていいよ」となってから、それまではグジャグジャにぬりこめられていた子供達の絵の中に、いろんなストーリーやイメージかあるんだな、ということが見えてきました。
そして自然と「オモシロイね、すごいねぇ。」と言う言葉が口をついて出てきました。
(すごいなぁ、なんだ…すごいじゃないか!)
素直にそう思えたんです。
私 :「センセイこういうのは考えつかないなぁ!スゴイ。じゃあ、もう一枚かいてみよっか。」
子供:「わかったぁ!」
そうすると、10分や15分そこらで1枚をパパッとかいてきちゃう。
子供:「どお?」
私 :「すごいな、じゃあ、もっとかけるなぁ…もっとかいてみよう。」
そうすると、子供たちみんな1日何枚も描いちゃう。ほんとにどれもすごくて、
私 :「これは本当にすごいなぁ…!!」
そうやって、私が子供たちを「すごいな」って思った途端、子供も楽しみはじめて…どんどん絵をかくようになっちゃったのです。
子供の絵のかく枚数が増えてきて、1日10枚くらいもかくようになると、絵を描きながら…どんどん発想が自然にわいてくるようになったみたいなんです。
やらされて描いて1年間に数枚の子供と、楽しくて1年間に百枚以上かく子供とでは、比べるまでもなく…
またこれは、教える教えないの問題じゃなく…
もう、だまっていても、子供たちにとんでもない成長がみられます。
そして、これは素質だとか才能だとかの生まれつきの差は関係なくて、どんな子にだって起こる変化だと思います。
○ ○ ○
「ダメだなぁ…」「あちゃぁ」「うわぁ」と思っていたときは、私自身も子供のよさを発見できていなかったし、当然ほめることもできませんでした。それも、子供にも伝わっちゃっていたのでしょう。
私の見方が変わる前と後で、子供の絵の内容が劇的にかわったのかといえば、実は…そんなには変わっていなかったのかもしれません。
でも、私が「オモシロイなぁ!!」と思い出したのが、子供たちに伝わったんだと思います。
人が見る目が、いかに大きく作用しているのか、というのがわかった出来事でした。
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「絵ってこういうものだな」とかそういう、大人の目でみてアドバイスしようとしてしまうと、泥沼にはまっちゃう可能性がものすごく大きいと思います。
もちろん、こういったことは絵の話に限りません。
子供のそばには常に親がいるわけですので、何か子供に対して本当に「おもしろいなぁ」とか「すごいなぁ」と思った途端に、ものすごく子供に通じるんじゃないかなぁ…と思います。
「もう、どうしようもない!」と子供を落としこめてしまうか、子供が「楽しいから、もっと、もっとやるー!」というふうになってしまうかは、子供の自身の問題ではなくて、そのそばにいる親や大人の見方の問題なんじゃないかなぁ…とも考えてしまいました。
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