:インタビュアー/小林:小林氏  
さて、今日は今までに小林さんが実感された「子供が輝き出した瞬間」に共通する要素…扉をひらく鍵となることはどんなことなんだろう、ということについてお話を伺いたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。
小林 よろしくお願いいたします。
まず、はじめに…「子供が輝き出す」といっても、ちょっと漠然としているのかもしれませんが、小林さんが思う“輝いてる子”と“そうでない子”の違いというのは、どんなところにあるんでしょうか。
小林 ぱっとイメージしてみると、どちらかというと“輝いてる”っていうのは、イキイキしていて、屈託のない笑顔ができるとでもいうのでしょうか…そうやって考えると赤ちゃんなんてまさにそう、となると、みんなが輝いているわけですが。

それが、やがて幼稚園にはいって、さらに小学校にはいって…そうなってくるうちに、ちょっとおおざっぱに聞こえるかもしれませんが、“輝く子”“そうでない子”に分かれてきて。

赤ちゃんの頃はハイハイできるようになったり、言葉をはなすようになったり、それだけでもう大騒ぎだったのに、成長に伴っていろんなことができるようになってくると、親の要求もふえてきますね。

コレができてうれしい!ということから、しだいに他の子と比べて「ここができない、こういうところが不得意…」と気になってきて、小学校に入ると勉強・運動など、幾つか定規で親が子をみてしまったり、子供自身がそういう枠で自分を見てしまったりしてしまいます。

うーん、そうですね。成績というものが出てくるし、どうしても数字に置き換えられた評価とか、目に見えるものがあるとそちらを意識してしまって、なんだかそこに気をとられてしまうというか、知らず知らずこだわってしまうかもしれません。
小林 ええ。もちろん親は我が子のよさは誰よりも知っていると思うのですが、子供に対して「あなたは、可能性がギューッとつまっていて、すばらしい存在なんだよ!」示してあげる機会はなかなかない…あまり思い当たらないです。
というよりは、「また散らかしっぱなしなんだから…」「宿題終わったの!」とつい叱ったり。そちらの方が多いかも?
小林 そうかもしれませんね(笑)ただ、お子さんが“できる子”だという場合は、学校に入ってから、いろんな場面で「自分はできる」と感じることもあるでしょうし、まわりから誉められる機会もあるのですが、そうでない子の方が圧倒的に多いわけです。

勉強なり他のことなどでも「自分のランクはこのくらいなんだ」「自分はたいしたことない」とか思いこんでしまう危険が、もう防ぎきれないくらい日常世界でおこるんじゃないでしょうか?子供は直感的にまわりの空気を感じ取る力が強いですから。

そう考えると、ちょっとコワイですね。
小林 ところが、たとえ成績が悪かったり、活発というよりは内気なタイプだったり、不器用な子だったとしても、自分を信じてあげられるようになると、ぱーっと驚くほどに変わってしまうんです。「自分はなにかあるんだ!」という目の奥に光が生まれるというか。

実は以前に主宰していた子供絵画教室で、はじめの募集をした時、「勉強も運動も音楽なども…ぜんぜんダメで、でもこの子に何かあるんじゃないかと思って」となかば強引にお子さんを連れていらしたお母さんがいらっしゃたんですが、もう、私も当時“この子ひき受けちゃって大丈夫だろうか…”と本当に不安だったんです。でも、そのお母さんの熱意に押されまして。

そのお子さんの様子はどんな感じだったのですか?
小林 「絵なんて描きたくないブツブツ…」といってうつむいている状態で、「何を描いてもいいよ」といったところで何も描けない…。でも、当時は私の方でも画期的なノウハウがあったかといえば手探り状態でしたから、絵を描いてもらうのもやっと。そしてできた絵というのも「いいな、すごいな」というものでは決してありませんでした。

はじめの頃の絵がこういう感じです。「絵1」 「絵2」

でもそれが、その後こういうふうに変わりました。「やぎ」 「ハイスイロ」 「船」

絵を描くのにすごい技術を身につけたとか、上達したというのではなく、独自の彼らしさのようなものが出てきたんですね。
なにより驚いたのはその本人の変化。本人の目に輝きが生まれたというか、自信が満ちてきたというか。そうやって劇的な変化が起こったきっかけというのも、私自身が子供たちに対する見方を変えたことだったのです。

というのは?
小林 「こういうのがいい」とそれに近づけようとするのではなく、すでにある(まだみえていないだけの)その子しかもっていない宝物を一緒に探して、それを掘り出してみよう!
と子供たちに対する見方をかえてみると、そういった変化がおきたんです。
つまり、小林さんの意識が変わったら、子供たちが変わった、ということですか。
小林 そういうことだと思います。“教える”から“見つけて伸ばす”に見方や考え方が変わったのがターニングポイントですね。それがなかったら、あんなふうに子供たちはパワーを炸裂させることにはならなかったんじゃないかと思うんです。見方ひとつで、大切な宝を埋めたままにしてしまうか、掘り出せるか…ちょっとしたことが、大きな違いになったと思います。

先日の個展で作品を発表された和津田さんも、絵を描くことになったきっかけとしてはお母さんの「何か自信を持たせてあげたい」という思いや信じる気持ちをもっていらした。その時点で、もう信じてあげるまなざしがそこにあるわけです。本当に、そういうことが大切なんだなぁと今あらためて実感していますね。

それと、ゆりさんから届く作品が二回目、三回目としだいにゆりさん独自の世界があらわれてきているのが本当にわかりましたし、しかも集中力や記憶力もすばらしいし、各段に変化していくのに毎回驚かされていましたから。わくわくしますね、私も。そうしていると、ゆりさんが絵を学校で誉められるようになったり、他の方から誉められてくすぐったそうにしている…とお母さんからうかがいました。

まじかで接しているゆりさんのお母さんご自身が、一番その変化を肌で感じていらっしゃるんじゃないでしょうか。
小林 ええ、そうだと思いますね。
多くの人は「絵を描くことでなんで自信がつくの?」と思うかもしれませんが、紙の上に自分が持っているものを表現し、人に感動を与えるほどに磨き上げて、そのよさが認められる。自分でも“すごいな”と思える。自分の個性だったり、自分がゼロから生み出したものを認められることほど、自信につながることはないですよね。
たしかにそうですね。
今まで小林さんが見てこられた生徒さんの、「どういった方向で伸ばしていく」というのはやはり一人一人違うんでしょうか?
小林 もちろん持っているものはそれぞれ違いますから、一人一人伸ばしていく部分も違います。たとえば、以前の教室でやってきたことというのは、色塗りが苦手なら、そこで時間をとるというよりも、いろ塗りはしないでもっと他の要素を伸ばすとか、虫が好きだったら、虫ばっかりを描いてみるとか…そのほうが不思議といろんなことをオールマイティーにできるよりも、深い何かを得られる。独自の世界をつくりあげて、他を圧倒してしまうんです。

今考えると、「絵を教えない絵画教室」でしたね。そこで試行錯誤したものが土台となって、いろんなノウハウもできてきたので、現在はさらに体系的にいろんな発想力・創造力を育てるということを私の指導のもとおこなっているんですが。

まず最初は、扉をあける作業を一緒にはじめるんですね。その子の心にある壁を壊すということかもしれません。個人差はもちろんあると思うのですが、一度その扉があいてしまうとスゴイ。私たちの想像をはるかにこえちゃいます。

それとここでちょっと、秘伝のポイントをお話しますと…私が自分自身もそうしてきたのですが、「人と同じ土俵で勝負しない」ということです。
そうすると、世界で一番ってくらいにすごくなっちゃいます。

ええ?世界ですか。
小林 そうです、一人一人が。誰かの跡を追いかけても、その誰かは追いかけてる最中もどんどん先にいっちゃう。そんな苦しい思いをしても先は見えないし楽しくないし、結局挫折したり、「どうせ自分はたいしたことないんだ」とあきらめてしまうのかもしれない。だったら、とことん自分にしかないもので勝負する! ということですね。

しかも、“自分ってダメじゃないんだ、自分には何かある、できる!”という大きな柱ができる。どんなに才能がある…とか素質がある…ということが問題なのではなく、自分自身の価値を信じることができるようになる。生きていくうえで基盤になる自信になるんだと思います。

その子のよさを気づいて引き出してあげる人がいるかいないか…つまり一番身近でお子さんのすばらしさを信じてあげられる存在であるお父さん・お母さんが、しっかりと見守ってあげるかどうかなんじゃないか、その違いこそ輝くかそうでないかの違いを生むんだと思います。

見守るといっても、見守り方ってやはり人それぞれですよね。
小林 そうですね。ただ、どういう見方・見守り方にしても親が子供に及ぼす影響力といったら、かなりのものです。親らしく立派でなくてはならない…とか達人とかそうではなくて…私なんかもう、立派だなんていえないですから、はい。

でも、親はただその存在だけでもうすでにスゴイ力を持っている…というか。親には「ああ、自分でいいんだ。自分って価値があるんだ。」と子供の存在を肯定してあげる力がある。ですから、その力をもっとおもいっきり発揮していって欲しいなぁ、と思います。

勉強ができないとか、不器用だとか、その部分だけで本人が「自分はダメなんじゃないか」とうつむいてしまいそうな子にほど、お父さん・お母さんの受け止め方しだいでその後にやはり大きく差がうまれるように感じています。

うーん、そのためにまず親の意識も変えなくちゃ…っていうことでしょうか。
小林 それはとても大事だと思います。それと、お父さんお母さんの頭の中に出来あがっている価値観のメガネをちょっと脇に置いて、じっくりゆっくりお子さん独自の世界を探していくにを焦らずに支えてあげる姿勢が大切かもしれませんね。
なるほど、そうですね。子供にとっての今がどれだけ重要な時期か、とあらためて親として考えてしまいますね。それではこのへんでインタビューを終わらせていただきたいと思います。小林さん、どうもありがとうございました。
小林 ありがとうございました。
 

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