いつもいつも教室の中で絵をかいているばかりでは、子供たちもダレてしまうようなので、また、いつもとはちょっと違った事をしてみよう…と思いました。
(そうだ、写生はどうかな? )
そう思い立って、さっそく子供たちに呼びかけました。
「今日は裏の庭で写生をしてみよう!みんな、イスと画板と紙を持って外にいくぞぉ!」
「何でもいいぞ…何処でもいいぞ 好きなものを描いてごらん」
とはいうものの、裏庭には、これといってモチーフになりそうなものはあまりなくて、絵に描きたくなるような庭ではなかったんですね…実は。
そういうこともあってか、子供たちはいっこうに何も描けないんです。
しばらくすると、みんなワイワイと遊びはじめてしまいました。
(何も描かない…何も描けない…うーん、作戦の変更だー。)
「ようし、この草を描いてみようよ、この花でもいいよ。何か一つだけでも描いたら、教室にもどっていいぞー、だから がんばって。」
教室に戻ってからが、また大変。私にとっての戦いが始まったんです。
一人一人のそばにいっては、話しかけました。
「この草の後ろにもう一つ大きな草があったよね ?センセイは見たんだけれど、この草の下にアリさんがいなかったか?」
「 アリさんてどうやって描くの? 」
「頭があって、胴体があって…しっぽがあったよ。そして胴体から足が3本ずつでていたかな?」
そこからが、想像の世界。
実際の景色や物をありのままにスケッチする写生大会といいながらも、見たモノをかくことは断念。
見えないもの、イメージをつくって広げていく作業に取りかかったのです。
「アリさんには家族もいたし、お家もあったなー。道もあるし池もあった。池には魚も泳いでいたし、ボートも浮かんでいたよね。
そうだ 思い出したけど この草の向こう側には山があったし、木もあったよ。」
「もっともっと思い出して(?)…いろいろなことを描いてね。」
これといって何もない庭の写生大会は、教室に戻ってからが本当の大会に。
写生は、目に見えるモノをそっくりにかいていく力に焦点がしぼられていますが、それに加えて、目に見えないものを頭で考えて発展させていく力…。
こういう力をもっと育ていくこと…これって、ほんとはとってもすごい力で、とっても大切なことなんじゃないだろうか?と気づいた日となりました。
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